3)ー1 具体的事例と対応・教訓

愛すべき厄介な人たち case5

髭人爺(ひげじんじ)です。

メンタル対応ってめっちゃ難しいわ。

対象者:Eさん 男性 35歳 企画職 既婚 

・企画職での業務で多忙な毎日を送り、TOP答申等も担当していました。

・Eさんは、もともと技術的にも優秀で、情報収集力が高い人材でした。組織としても競争意識が高い部門だったと思います。開発TOPへの提案がメイン業務であり、極度のプレッシャーがかかる状況でした。

・担当テーマの提案についてTOPから厳しくダメ出しされたことがきっかけかメンタル(抑うつ症状)を発症。休職・復職を繰り返すような状況でした。

・もともとは性格的にも非常に真面目で繊細な印象でしたし、話も誰に対してもわかりやすくコミュニケーションが取れるタイプでしたが、休職後はストレスからか身体も太く、頭も丸刈りで筋肉の塊のような別人の風貌になってしまい、話す内容も「明らかに虚言」と思われるようなことも多くなっていました。そこでまた休職させるといった対応をさざるを得なかったわけです。

発症後の状況:

しばらくして、本人が復職を希望し主治医からの「就労可能」という診断書を持参されました。ただ「元の所属に復職させるとまた再発する可能性が高い」との産業医判断もあり、別部署での受け入れを検討・準備しましたが、最終の復職判定当日に無断で欠席しました。翌日本人に確認すると「急に体調を崩して自宅で寝ていた」とか「家の事情で外出できなかった」と何度も発言内容が変わりましたあまり反省しているようには思えませんでした。その後も何度か、主治医からの「復職可能」という診断書を提出されましたが、その都度産業医から主治医に直接Eさん本人の状況を確認し、正しい情報を主治医に伝えていなかったことが判明したため、復職は認められず【休職扱い】を継続していました。

対応:

休職期間も数カ月過ぎ、本人も治療に専念できていた様子で、主治医からも「随分落ち着いてきた」という診断書も発行されたことから、就業規則上でも認められる期間ギリギリになっていたので、『最後のチャンス』として復職判定をしました。結果的には産業医も復職OKの判定だったため、受け入れ先(勤務地は変更になった)と調整し、初出社日には人事担当(筆者)も同行して、新しい部門にご協力いただいて受け入れていただきました。

が、何ということか、翌日の勤務初日から導入教育時間中に勝手に持ち場を離れ、事業所内を勝手に動き回るという問題行動をとったため、急遽受け入れは中止とし、就業規則に基づき【復職取り消し(再度休職指示)】としました。それから数か月後休職期間満了日の1カ月前に本人と奥様に会社に来てもらい、就業規則に基づいて「休職期間満了による退職」となる旨を伝え、即日退職願を記入作成、押印処理をしてもらいました。

結果:

本人は休職期間をうまく回復に充てることができなかったため、休職期間満了をもって退職となりました。何度も就業規則違反行動があったこと、会社からの指示内容に従わなかったこと、会社としては復職先の調整も含めできる限りの対応はしてきたことを、本人及び奥様には理解してもらってから手続きをとったので、トラブルなく退職処理となりました。

教訓:

1)メンタルヘルスケア対象者の発言やメール内容は、その病状によってコロコロ変わるので、可能な限り書面に残し、次回面談する際にまずはその記録の確認からスタートするといった工夫ができていましたので、本人もご家族も「本人側の問題」と最後は納得されました。

2)復職にあたっては、意識づけのためにも事前に「誓約書」を用意し、署名押印をさせていました。結果的には自分で署名押印した「誓約書」の内容を自分が守れず、最後のチャンスであった受け入れ先にご迷惑をおかけしたことが、退職通知の際のトラブル回避につながったと思います。本人自身の言葉で約束させ、その証拠を記録しておくことの重要性が認識できました。