髭人爺(ひげじんじ)です。
メンタル対応 ケース3です。
対象者:Cさん 女性 25歳 事務職 独身
・元々契約社員として勤務後、事務職として正社員登用。役所への届け出手続き書類作成業務に従事。性格は神経質でやや集中力に欠けるところあり。誰とでも仲良くなれるタイプではない。仕事のレベルは標準クラスで、特に目立つ成果も出さないが、担当業務は一人できちんとこなすという状況だった。
発症:
「同じグループの女性テーマリーダーから嫌がらせを受けている」と人事担当宛に相談があり面談を実施しました。わからないことを質問すると「チッ」と舌打ちされ、わかるように教えてもらえず、失敗したら他のグループメンバーにもccを入れた上で、メールで注意されるとのことでした。テーマリーダーの上位職の管理職にも相談したけど「気にしすぎじゃないの?うまくやってよ」といわれるだけなので、会社に来るのがつらく、朝起きられないとのことでした。
また「ちがうグループの男性リーダーからセクハラまがいのことをされる」との訴えもありました。急に顔を覗き込まれたり、引き出しを開けた際に机の中をジロジロ見られたり、気づくと後ろについてこられたり、遠くにいてもジッと自分を見ていてよく目があったりするとのことで、毎日気持ちが悪いとのことでした。(実際にそのような行為があったかは確認できず) 人事面談時点で、カウンセラーやメンタルクリニックにはかかっていないとのことでしたが、やや「人のことを気にしすぎる性格」であるような印象はありました。
対応:
「人事担当として、リーダーの上位職の部門長に事実確認しましょうか?」と話したところ、「もしもそのままリーダーに伝わると、また嫌がらせをされたり、評価を下げられるから良いです」とのことだったので、一度「気持ちを楽にするため」という名目で会社の診療所で契約しているカウンセラーを紹介するにとどめました。(本人は結局受診しなかったようです)
一方で部門長には(彼女からの相談内容の詳細は言わず)筆者の気になることとして、メンバー間の人間関係について聞きました。部門長もちゃんと気づいていました。時機を見て業務分担の変更を実施して、女性テーマリーダーとの業務上の関連性を薄くしてもらった上に、別グループの男性リーダーとは席を離すように、できるだけ自然にレイアウト変更を実施しました。
その後、評価についての不満を相談されましたが、期初の目標を上司とすり合わせる際に、具体的な目標値を明確にして共有することで、評価POINTを明らかにして、納得して仕事に取り組んでもらうこととしました。
上司側は正直、仕事の質も成果も十分に上がらない状況で、評価に不満を言われて困っていた様子でしたが、上司の責任としてリーダーへの指導育成も含め、Cさんのフォローをお願いしました。(上司の責任で「本人が気楽に相談できるような先輩社員」を“世話役”に指名してフォローしていました)
結果:
うまくいかなかった女性テーマリーダーや、セクハラ疑念のあった男性リーダーと物理的に距離を離したことにより、Cさん本人は一応は体調を回復しました。(クリニックにかかるまでひどくはならなかったので、トラブルの未然防止はできたと思います) ただしその後も継続観察が必要ということを、上司と人事担当の共通認識としました。
教訓:
1)もともと被害者意識が強すぎる人は、どんなことにも自信が持てずネガティブに受け止めてしまうので、まずは事実確認をする際に、「今まで上司や同僚からの優しい気遣いや配慮がなかったかどうか」を振り返ってもらい、周りへの感謝の気持ちを自覚してもらうことが重要と思いました。(今回のケースでも、本人がポテンシャルを発揮できるように、本当はいろんな細かい配慮がされていたと思います) また定期的に話を聞きながら、周りに感謝できるような心の状態になるように促していくべきと思いました。
2)日常から吐き出し口がないと不安になり、それが不満につながってしまうので、上司としては直接話を聞く機会を増やすことは当然ですが、同じ職場内で“何でも話を聞いてくれる相談役”を職場の先輩社員に担っていただくか、もしくは定期的に産業医・カウンセラーに面談していただけるような状況を作っておくことも必要と思います。
3)対応を中途半端にしてしまうと「会社には相談したが何も対応してくれなかった」という誤解を招きやすいので、面談結果はきちんと記録し、対応に漏れがないようにしておくべきと感じました。
今回のようなケースは、実際には(程度の差はあるにせよ)どこの部門でも起こりうる内容であり、実際に今、それで困って悩んでいる人も多いと思います。『話を聞いてほしい』『人間関係でどうしたらよいのかわからない』といった対象者を少しでも早く見つけることができるように、社員全員のストレスチェックや、対象者が特定されない工夫をした定期的面談・カウンセリング等が必要と思います。