髭人爺(ひげじんじ)です。
病気で苦しんでいる人を追い込んだらあきません。
メンタル対象者は非常に言葉に敏感です。同じことを伝えたいのに少し言い方を間違えると、「叱責」に聞こえたり、「馬鹿にしている」ように感じたり、せっかく配慮しているのに「戦力外通告」のように受け取られたりすることも少なくありません。
上司として個人面談をする際には『カウンセリングモード』に切り替えて、自分の発言1:対象者の発言2くらいのつもりで“傾聴”に専念することが大切です。もしかすると上司である自分自身が、対象者にとっては【ストレッサー】になっているケースもありえますので、傾聴しようにもなかなか本音を話してくれない可能性も理解しておきましょう。その際は、上司として自分自身が面談をするのではなく、チームリーダーに任せるなり、人事担当やカウンセラーもしくは産業保健スタッフにヒヤリングをお願いするということも了解する姿勢が重要です。
本人から本音をきき出すという時の「きく」は、自然にきこえてくる時や質問して回答をきく時の『聞く』ではなく、『聴く』でいきましょう。この漢字が示す通り【耳】+【目】と【心】で聴く姿勢が大切と思います。(これはメンタル研修からの受け売りです)
下記に、一見本人のことを心配しているようですが、メンタル対象者本人側からすると誤解をまねきやすい表現をあげてみます。もちろん上司側は良かれと思って状況確認のため質問しているのでしょうが、会社を休んで迷惑をかけている意識が強い人や、仕事から離れて不安に思っている人は、違う意味にとってしまいがちです。(実際に私も何度か下記と同じように感じたことはあります)
「もう大丈夫そうだね。すぐ働けるんじゃないの?」
⇒一見大丈夫そうに見えても、実は本人はまだまだ不安で無理しているかもしれない。
「いつ復帰できそうなの?」
⇒本人も復帰したい気持ちはあっても、実際にはまだまだ無理をしている状況かもしれない。復帰を焦らせる可能性がある。
「外に出て気分転換した方が良いよ。家にこもっていちゃ治らないよ。」
⇒まず体調が安定するまでは、ストレスとなるような余計な刺激は避けて、何も考えずに自宅で過ごすことで身体と心の休養になるというのがメンタルケアの基本である。人によっては外に無理やり出るのはストレスになることもある。外に出るのは、もう少し元気が出てきて、気持ちの余裕が出てきてからで構わない。
「身体鍛えれば元気になるんじゃない?」
⇒身体を鍛えることと精神的に強くなることは関係ないとは言えないが、鍛え方が足りないから病気になったという誤解を生む可能性もある。身体だけ無理して鍛えても、気持ちがついていかないと逆効果になることもある。
「気にしすぎなんじゃないの?」
⇒本人が悩んでいることを無視した、自分勝手な判断を言っている。
「病気を治すことだけ考えていればいいよ。」
⇒一つのことだけ考えるというのは誰でもなかなか難しいことであり、特に長期に休んでいる間は、自分の担当業務のこともどうしても気になってしまうものである。素人判断で病気の治療法について話すのは問題である。「主治医のアドバイスを聞いてゆっくり治せばよいよ。こちらもじっくり待っているよ」くらいの表現が望ましいと思います。
「見た目は元気そうだけど、どこが病気なの?」
⇒本人を安心させようと元気づけるつもりでの発言と思われるが、本人は無理してつらいのを我慢している可能性もある。逆に「いつまで病人みたいにしているの?こっちは大変なんだ」というマイナスの意味にとられるリスクもある。
「とにかく頑張って早く治してよ。」
⇒本人は既にめいっぱい頑張っているかもしれない。さらに頑張れと言われるのは「これ以上何を頑張れば良いんだ」という気持ちになりやすい。【頑張れは禁物】というのが常識。
「会社のことは心配しないで、仕事のことは忘れて!」
⇒ゆっくり休んでもらおうという気持ちからの発言と思われるが、「自分は会社にとってお荷物」であり「復帰しても居場所がないのではないか」と不安になる可能性がある。
「ウツなんて気持ちの持ちようで逃げていくんじゃない?」
⇒病気は気合いでは治らない。「脳を休める」ことが重要なのに、余計なアドバイスはまさに逆効果になるし、気持ちが弱いから病気になったと言われているように思う可能性がある。
「真面目に考えすぎるからいけないんだよ。」
⇒「真面目」というのは本人にとってはプラスの長所であり、そこを否定されるというのは本人からすると自分を否定されたように感じるケースもある。「不真面目」な上司には特に言われたくない言葉である。
「困っていることがあれば、何でも言ってよ。」
⇒上司や先輩として気遣いの発言と思われるが、本音を言えないような人間関係だったから、それが原因でメンタル発症しているかもしれない。自己弁護のためのコメントとしか響かないことがある。
「なるべく薬に頼らない方が良いんじゃないの?」「今後も薬を飲み続けるんだね。」
⇒専門医が判断して処方している内容を素人が勝手な判断を押し付けてしまうと、本人が不安になり、途中で薬を飲まなくなってしまうことがある。薬は効き目が出るまで1~2週間かかるものが多いし、メンタル対象者本人の判断で減らせるものではない。逆に自己判断で急に飲まなくなると、薬によっては自殺企図が出てくる可能性もあるものもあるそうだ。処方は専門医に任せ、本人には「処方を守る」ようにしむけることが重要である。
というわけで【専門家でない人は余計なコメントは言わないで、本人からの言葉、回復連絡をじっと待つ】くらいがベストと思われます。かといって本人と全く連絡を絶ってしまうと、それはそれで本人が「復帰できるのか」「誰も自分のことなど気にしていないんじゃないか」と不安に思うこともあるかもしれないので、定期的に連絡を取り合うことを、休み始める前にルールとして決めておく等の配慮があればよいと思います。