髭人爺(ひげじんじ)です。
今回は「何としても自殺を防ぎたいんや!」という話です。ちょっと長いです。
1998年ころから日本では自殺者が急増し、年間3万人を超える人が自ら命を絶っているのはニュース等でも報道されています。国際的にも日本は自殺死亡率の高い国の一つだそうです。その中には当然ながら就労者もいて、筆者のような【人事マン】の中には、自社の社員が対象になった経験を持っている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
自殺者の傾向として、女性よりも男性が多いこと、対象年齢層は幅広いですが50歳以上の方が多いことは知られているかと思います。自殺理由は「健康問題」「生活費問題」「家庭問題」が多いですが、20歳代から40歳代くらいの層では「勤務関係」や「男女関係」といった問題が理由になっていることがあるようです。また、まだ社会に出ていない段階の10代の学生が「いじめ」を苦にして“楽になりたい”と自ら若い命を絶つという悲惨な状況が頻繁に報道されています。自殺者総数は若干横ばいになってきていますが3万人を切ることはできていません。
自殺をする人に対して、筆者は「我慢しきれなかった弱い人間だ」とか「もっと別の生き方があっただろうに」とか無責任なことを言うつもりは全然ありませんし、本人を責める気も全くありません。恐らくはそれぞれの人たちにも、家族や大切な人はいただろうし、大事にしていたものもあったでしょうし、自分がなりたかった姿、やってみたかった夢もあったと思います。ただ自らその命を絶った瞬間には、一切のことが頭に浮かばずに、【楽になりたい。それも今すぐに】もしくは【私は独りぼっちだし、いなくなっても誰も悲しまない】ということだけで頭が一杯になってしまって、他のことを一切考えられない状況に陥り、ふと足を踏み出してしまったのであろうと思います。そう思うと、やはり「その瞬間は冷静な判断ができない状態」つまり「精神的に異常な状態(メンタル発症)」であったのだろうと思うのです。(というかそう思いたいのです。)
大事な家族の顔も思い浮かばないとか、普段だったらあり得ないことも起こってしまうというのは、やはり自分の意識ではどうしようもないほど心身が異常をきたしているという状態なのだろうと思います。しかも少しだけ数分間だけでも、時間・タイミングさえズレれば、冷静に戻って助かることも多いようです。
残されたご家族や知人はその後ずっと『なぜ気づいてあげられなかったのか?』と一生ご自身を責め続けることになります。これは想像もできないような辛さです。それを考えた時、やはり【自殺だけは絶対になくしたい】と思うのです。ご家族としてはその苦しみをぶつける相手がいません。従って、学校で起これば学校宛に、職場で起これば会社宛に、ご家族や知人の気持ちの矛先は確実に向いてくるでしょう。
だからこそ、会社の中では少なくとも、上司や同僚か、もしくは産業保健スタッフや【人事マン】の誰でもよいので、本人の不調(ちょっとしたサイン)に早期に気づき、特に自殺企図を想起されるような発言や行動があった場合には、迅速かつ確実に、初期対応をすることが最も重要と思います。そのためにも日常からアンテナを張りめぐらせて本人の変化に気づけるようにしたいところです。
【人事マン】として新任の管理職研修の講師を担当させていただいた際には、敢えて厳しく下記のように言っていました。
「いいですか。皆さんの部下がもしも仕事のことで悩んで自殺された場合には、皆さんが会社代表として葬儀に出席することになるんですよ。想像してみてください。ご家族からは指をさされて『人殺し!子供を返せ!』と罵倒されますよ。それでも葬儀には参列し続けなければなりません。いかがですか? 葬儀に参列できますか?」
新任で管理職になられる方は、自分の責任の重さを実感していただくようにしていました。【人事マン】だけでは防ぎきれるわけはありませんので、絶対に管理職には認識してもらわなければならないと思って、意識づけをこころがけていました。管理職に昇格された方にとっては嫌な話だったかもしれませんが、それほど管理職という立場は『部下を預かっている』ということだと思っていました。
厚生労働省が中央労働災害防止協会(中災防)と連携して作成した“職場における自殺の予防と対応(2010年8月第5版)”には、自殺の直前のサインとして下記のようなことがあげられています。是非自殺につながる前に、皆さんでキャッチして食い止めましょう。自殺の引き金になるのは周囲から見ると些細な出来事である方が圧倒的に多いそうですから。
<自殺直前のサイン例>
・突然涙ぐむ・急に不自然なほど明るくふるまう・性格が急に変わったように見える・周囲からのサポートを拒絶する・服装が急に乱れる・今まで関心があったことに興味を失う・不機嫌で怒りやイライラを爆発させる・仕事の効率が極端に落ちる・職場を休みがちになる・遅刻早退が増える・当日の休暇申請が増える・投げやりな態度が目立つ・集中できない・業務中に席を離れ居場所が分からなくなる・口論の際に感情がむき出しになる・過度に危険な行為を繰り返す・極端に食欲が落ち体重が減る・不眠がちになる・大量にお酒や薬物を飲む・大切なものを誰かにあげたり整理したりする・自殺をほのめかす言動(「俺なんて必要ない」「何の役にも立っていない」「居ても迷惑がかかるだけ」「もう終わりにしたい」等)をする・遺書を用意する 等
このブログが少しでも自殺者予防にお役に立てば幸いです。