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年代別ライフサイクル上のストレス

髭人爺(ひげじんじ)です。

各国でのグローバリゼーションの動きで、日本でも「ダイバーシティ推進の必要性」「終身雇用の崩壊」「非正規雇用の格差」等の課題解決の為に、【働き方改革】の方向性が出されていますが、世代間の価値観のギャップや環境変化スピードへの適応力の差によって、『各年代別の役割のそれにかかわるストレス』の種類は内容がかなり異なってきています。今日はその辺りをまとめてみました。

 

1)新入社員~3年目社員(20歳代)

かなりの比率で大学まで進学し、就職活動も年度ごとに活動時期のルールが変化するというような中で、入社してきている優秀な人材が多いともいわれています。その分、仕事に対しての理想も高く、20年前では常識であった「新入社員のうちはまずは現場の単純作業から」といったやり方に対してはなかなか納得せず、理屈で理解できないと不満に感じてしまうということが多いようです。

特に同世代同士のヨコのつながりを大切にしてきた世代ですが、情報通信機器に頼ったコミュニケーション方法にどっぷり浸かっている世代です。就職によって環境が大きく変わる時期でもあり、年代層の違う上司や先輩とのコミュニケーションや、あるいは「理不尽な要求をする顧客」にも自分を抑えて対応しなければならないといったことを初めて体験することになり、それが大きなストレスになってしまうことが多いかと思います。場合によっては【適応障害】【ウツ症状の発症】といったことも実際に多く出てきています。

ということから、(大変な思いをして就職活動をし、やっと内定を獲得して入社したにも関わらず)非常に早いタイミングで離職を決めてしまう人も多いという状況です。会社側としては「まだ育成期間中。社会人としての基本は現場にあるので経験させたい」という思いで進めている途中に、あっさりと退職願を出されてしまうという状況に陥ります。入社までの間、大変な労力とコストをかけて採用活動をしてきた企業側としては非常に大きな損失です。年齢的に若い分、転職先でも「即戦力」としての期待よりも、「若さ」「柔軟性」「伸びしろ」といったところを期待されていると思います。

 

2)中堅社員(30歳代前後)

入社して10年前後たつと、業務も一通り全部できるようになっており、担当テーマを持ち、後輩の育成責任もある程度背負いながら、質量ともに【仕事の中核を担う・実務責任を負う】といった立場になると思います。本人がいないと仕事が回らなくなるくらいになり、多くのプレッシャーにもさらされる機会が増えるでしょう。また同期社員との昇進昇格スピードの差を目の当たりにする時期になります。昇格が遅れた場合の焦りや、評価をしてもらえない不満といったこともでてくるでしょう。

プライベートでも結婚や出産(育児)等での変化点になる方が多く、生活スタイルも大きく変わるタイミングです。お子様が小さいと夜泣き等もあり睡眠時間がゆっくり取れないといったこともあるでしょうし、お子様が少し大きくなったら『保育所問題』で頭を痛めることもあると思います。夫婦間でもストレスを緩和しあうことができれば理想的ですが、ストレスをぶつけ合うあるいは気を遣って自分の中に抱え込んでしまうということもあるかもしれません。

ちょうど「仕事の量・質ともにストレスが増える」「生活リズムが変化することによる身体への影響が大きい」という世代ということになります。忙しいので体調不調を感じても「本人が気づきにくい」「休みにくい」という状況になりやすく、周りが気づいた時には、心身ともに既に大きなダメージを受けてしまっているということもあると思います。また転職をするとした場合、30代前半までが「自分がやりたい仕事に就けるチャンス」も大きく、自分のキャリアについても悩む時期にあたると思います。

従って、病気を発症してしまったとしたら「病状がかなり進んでしまっており、長期間にわたって急に休まざるを得ない可能性」があると思います。会社としてもケアしてあげないといけない世代の一つです。

 

3)中間管理職(30歳代後半から40歳代)

ちょうど係長~課長世代であり数名~数十名の部下を持つ世代に当たります。組織としての目標必達の責任と、部下育成(自分の後継者育成も含めて)の責任が大きくかかる世代です。実務をきちんと回せていれば良い時代は終わり、『人(部下)を使って組織力を維持向上させ業績貢献しなければならない』という大きな重圧にさらされます。メンタルヘルス不調のリスクが一番高い世代だと思います。

一人一人の部下の個性・ポテンシャルを見極め、適正な人材配置と業務分担を決めなければいけませんし、関連部門との調整の際も先頭に立たなければなりません。さらに上の上司からは『業績目標必達・納期必達』のプレッシャーが襲い掛かるでしょう。かといって転職しようにも「限界年令(一般的には40歳代前半までと言われている)」がちらつく時期です。

プライベートでもお子様(思春期?)の学校対応、教育費の問題、住宅の問題等もあるでしょうし、「転勤」異動の際には、単身赴任を余儀なくされることもあるかもしれません。

筆者の経験でもメンタル不調になる事例で最も多かった世代です。あくまでも筆者が対応した事例での印象ですが、【男性】【35歳前後】【技術開発者】【性格は極めて真面目で責任感が強い】【仕事はとびぬけてできるわけではないが期待されている役目はきちんとできる】【人とのコミュニケーションは苦手】【リーダーシップをとるのは苦手】【独身もしくは単身赴任】【父親は頑固で厳しいが、母親は過保護】という方が多かったという記憶が強いです。

 

4)中年期(40歳代後半から50歳代)

この世代になると、組織や業績を引っ張っていく層と、地道に役割をこなしていく層にはっきり分かれていると思います。当然のことですが「年下の上司」「異性の上司」「育成した後輩が自分の上司になるケース」も出てくるので、自分のプライドとの戦いもあるでしょう。

ご家庭でもお子様も高校受験、大学受験といった時期にあたり、ピリピリした雰囲気が家庭内でも流れ、ゆっくり心を癒すことのできる場所というのは少なくなってくると思います。

一方体力的にも筋量が落ちてくるころで、仕事上でも頑張りが利かなくなり、翌日になっても疲れもとれないということが増えてくると思います。内臓系も少しずつ弱ってくることになり、病気に足しての抵抗力も薄れてきます。

そういう時にメンタル不調が忍び寄ってきます。自分自身としては「まだまだ仕事で高い成果を出せるというプライド」と「体がついていけるかなという不安」との間で、揺れ動くこともあると思います。また「自分は会社に必要とされているのか?」といった疑問がわいてくる時期でもあります。

 

5)定年前~再雇用時代(50歳代後半~60代前半)

担当業務としては「職人」的な仕事をするか、「部門長」として責任を負う仕事をするかに明確に分かれてくると思います。プレッシャーという意味では「部門長」の仕事をする対象者の方が大きいかと思います。

ただ「職人としてやっていける」だけの専門性や経験を有しているかという観点で見ると、「全く違う職種(管理業務等)をやらされるのではないか」「いつまで仕事があるのだろう。(子会社に出されてしまうのではないか?)」といった不安も大きいと思います。特に年々国からもらえる【年金】が減っていくだろうといわれている中で、老後のことを不安に思う人もでてくるでしょう。

プライベートではそろそろお子様の教育責任からは逃れたとしても、ご両親世代の介護等の問題も出てくるころです。

実はこの年代でも「自殺」をされる方が多いというデータもあります。“団塊の世代”といわれる世代の少し後輩にあたる世代であり、業務上の苦労も絶えなかった方々が、自ら死を選ぶというのはあまりにも心が痛い思いです。

 

上記のように、年代ごとに関わってくるストレス内容や、かかりやすい症状は異なってくるかと思います。もちろんどの世代に対しても、きちんとした知識と温かい気遣いをもって【メンタルヘルスケア】を進めるというのは非常に大切なことですが、それぞれの年代ごとに抱える内容が少しずつ異なっているということは認識しておいた方が良いかと思います。

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