①新着メンタル情報

日大アメフト事件について思うこと①

髭人爺(ひげじんじ)です

世間を騒がせていますねえ。日大アメフト事件。今日は「メンタル的に追い込まれたというのはパワハラそのもの」という話です。

一連の報道を見て「スポーツマンシップとは何ぞや?」ということを考えさせられます。加害者になった日大の選手は、練習の時から「やる気が見えない」と言われ続け、練習からも外され、日本代表にも参加させてもらえず、定期戦の中でも一番気持ちが入るはずの【関学戦】という、東日本の学生TOPチームVS西日本の学生TOPチーム同士の試合で、前代未聞の悪質なレイトタックルをしてしまいました。

TV報道では「監督コーチから指示があったのか?なかったのか?」に焦点を当てた議論がされていますが、筆者がまず思ったのは『これが会社組織で起こったことであれば、事件が起きる前の段階で既に悪質なパワハラであり、コンプライアンス違反だ!』ということです。会社組織であれば、悪質タックルが発生する前の段階で、コンプライアンス違反で懲戒処分にあたると考えます。それに加えて悪質タックルが行われ、その行為を指示した責任者が「自分は指示していない」「ケガさせるまでとは言っていない」とシラを切るという、まさにハラスメント案件にありがちな対応をしています。

【選手を精神的に追い込んで事件を起こさせる】というのは、加害者選手だけでなくアメフト部メンバーも気づかぬうちに、何か“洗脳”的なことが日常から行われている集団になってしまっていたように思いました。

無責任なTVコメンテーターからは「もっと早く選手の方から声を上げていれば…」といった発言も聞かれましたが、

①昨年日本一にもなった部であり、しかも内田監督が戻ってきてから結果として久しぶりの優勝をしているので《功労者》扱いになっている

②日本全国から「日大フェニックス」に入りたいという理由で優秀な選手が集まっている中、極めて厳しいレギュラー争いがあり、同じポジションにも強力なライバルがいる。

③内田監督はアメフト部だけでなく、日大の副理事でもあり絶対的な権力・権限を持っている

④日常の練習では選手と直接話すこともほとんどなく、全てコーチに任せているが、コーチ自体の人事権は全て内田監督にある。

⑤日常から暴力的な指導が行われていたことについて、複数の選手から証言が出ている。

といった中で(想像でしか言えませんが)おそらくはとても選手側からは発言できるような状況ではなかったと思います。

実際には選手の皆さんも、今回のタックル事件が起こってから、「ハッ」と我に返った人も多いと思います。集団であるがゆえに、余計に「個人の口から『これは間違っている』とは言えない空気」が支配していたように思いますし、ある意味で部全体が異常な空気感の中でトランス状態にあったのではないかというようにも感じます。(試合直前のロッカールームの様子の動画も公開されていましたが殺気立っていましたね。スポーツの世界ではよくある光景だとは思いますが)

特に加害者の選手は「1プレーでどんなことがあってもQBに突っ込む」ことしか考えられない状態になるというのは、何か戦争時に新兵が無理やりむごい行為をすることを強制され、人間としての正常な感覚を麻痺させられてしまうこととイメージがかぶってしまいました。もちろん戦争とスポーツで共通点をあげるのは不謹慎であり、よくないとは思いますが、加害者の選手もタックルに飛ぶまでは「冷静な判断ができない」ほど気持ちが麻痺していたのは事実です。きっとタックルに飛んだ瞬間に我に返っていたのではないかと推測します。

今日になって他の日大の選手からも「声明文」が出てくるというのは、日大の闇の深さを表していると思います。メンバーたちも「もしかしたら自分が同じ立場になっていたかもしれない」とゾッとしたからではないでしょうか? みんな同じようにプレッシャーをかけられていて、パワハラを受けていたのだろうと考えます。

先日の加害者本人の会見を見ても「やってしまったことを素直に全て話し、本当に心から後悔している」ということは、視聴者全員に伝わったと思いますし、反対に、本来【スポーツマンシップを教える側】の立場の監督とコーチの会見は不誠実で醜悪なものでした。けが人を出してしまったことを考えると、加害者の選手の行為は責められるべきでありますが、会見の姿勢は【スポーツマンらしい潔さ】と思ってしまうほど、対照的でした。

本件の結末は早々に決着がつくと思いますが、心配なのは被害者加害者を含む選手たちのメンタル対応です。周りの日大の選手たちも、こんな事件扱いになり、練習どころか今後の活動さえできなくなる(4年生はそのまま引退?)ということは予想していなかったでしょうし、日常からのパワハラがこんな形になってしまうとは考えもしなかったでしょう。就職活動にも影響が出るでしょうし、来年以降の入試にも少なからず影響するでしょう。スポンサーも降りてしまう企業が多いでしょうし、満足に活動もやっていけない気がします。アメフト部以外の生徒にまで悪影響を及ぼすことは間違いありません。

また明らかに今回の件は、【立場が強い人間が起こした悪質なパワハラ案件】であり、これを教訓に、スポーツに限らず社会全体で「お互いの立場を考慮し、信頼関係が築けるコミュニケーションはどのようにしたら良いか」ということを考える時だと思います。特に上司・管理者は「知らず知らずのうちに、自分の部下が反対意見を言いにくいような雰囲気を作ってしまっていないか」について、冷静に反省してみるべきと思います。

アメリカンフットボールという競技のファンの一人としても、被害者が復帰できたことが「奇跡的な幸運」と考えて、体制全体の見直しにつながればと思います。(ちなみに筆者の息子も大学でアメフトを始めたばかりでした。他人事ではありませんでした)

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