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復職支援プログラムについて

髭人爺(ひげじんじ)です。

今日は「休職もしくは長期間にわたり休業していたメンタルヘルス対象者の復帰の際の留意点について」の話です。

厚生労働省が出した指針の中で【4つのケア】については、本ブログでも何度か書いてきました。http://higejinji.net/mentaljijyo/mental4care/

その中でも、「ラインケア」ならびに「産業保健スタッフによるケア」の中で、重要なPOINTになる項目の一つに、この【職場復帰支援】の話があります。メンタル症状により、長期間にわたり治療に専念してきた対象者にとっては、『職場復帰』というのが一つのターゲットでもあり、かつ同時に不安な項目でもあります。

長期間休んだものにとっては、従来までの職場であっても「思いの外、緊張する出来事」になりますし、「きちんと元のように仕事ができるかどうか不安」な気持ちも持ち合わせていると思います。また、久しぶりに職場の上司・同僚と顔を合わせることについては、申し訳ないような、照れくさいような不思議な気持ちと、休みの間業務のフォローをしてもらったことによる感謝の気持ちで複雑な思いをしています。

原則として「仕事内容に慣れている」「知っているメンバーがいる安心感がある」ということで、復帰先については《原則として元の職場に戻す》ということが多いと思います。ただし産業医とご相談いただいた上で、元の職場の上司や同僚との人間関係が、元々のメンタル発症の原因(ストレッサー)になっていると診断があった場合には、本人の心の負担ができるだけ小さくなるような「復帰先」を検討するということになろうかと思います。

そこで(筆者自身もメンタル経験者として)復帰先の「所属」の上司および同僚の皆様へのお願いです。

1)職場復帰する際には、主治医も産業医も専門医としての視点で「就労可能」というご診断をしていただいていますが、もちろんいきなり以前のような仕事の量、仕事の質をこなすことは難しいです。主治医・産業医の「就労可能」というご判断というのは【まずは、元の職場に時間通り通勤、出社ができ、決められた時間(業務時間)は問題なく、職場に座って、最低限の作業ができる状態であること】というレベルであるということです。復帰後少なくとも産業医が指示される一定期間は、業務量・業務内容等についてのご配慮をお願いします。

2)かといって“必要以上に特別扱いあるいは病人扱いされる”というのは、復帰できた対象者にとっては、居心地が悪いものです。きちんと通勤リズムが整うまでは、配慮いただきたい気持ちはあるものの、あまりにも執拗に「そこまでしなくても良い」とか「この会議には出なくても良い」といった強い命令口調での対応をされると、『何とか早く元のように元気になって、ご心配・ご迷惑をかけたことを取り戻したい』という焦りで一杯の対象者には『私はそんなに役に立たない存在になってしまったのか』と誤解することも出てくるかもしれません。あくまでも(焦っているだろうなあという気持ちは理解した上で)見た目は普段通り接してもらえるのが、一番有難い対応だと思います。

3)メンタル疾患の場合、症状が出なくなったとしても、それは“寛解(かんかい)”と呼ばれる状態であることが多く、処方等で治まっているだけの場合があります。ストレスに対する耐性が落ちていることが多いので、一見は元気になったように見えても、発症前と全く同じような仕事になると何がきっかけで再発するかわかりません。できる限り対象者の「今」の状況を都度把握し、ゆっくりと回復していくプロセスを見守ってあげてください。

4)従来担当していた難しい業務ではなく、単純な作業を指示され放置されるというのも、たとえ自分自身の体調への配慮だとしても、意外に辛いものです。かといって、みんなで寄ってたかって声をかけるのではなく、あくまでも自然に、目立たないように見守っていただいて、仕事の区切りの時に声をかけるといった対応が嬉しいと思います。

5)遅れを取り戻そうとする焦りがあるということに気づいてあげてください。あと少しで仕事の一段落がつくようなタイミングで、「時間外労働はダメだから、もし今の作業が途中でも帰ってください!」と言われると、【申し訳ない】気持ちのまま帰宅することになります。終業時間が近づいた段階で状況を確認し、必要であれば一段落早めに区切るなり、少し手伝って区切りの良いところまではしてしまう方が、ずっと気が楽になると思います。

6)職場復帰プログラムは、状況に応じて柔軟に内容の修正をお願いします。もともとメンタル症状を発症しやすい真面目な性格の方は、復帰のプログラム自体が予定通りに進んでいないと、それだけで気にしてしまう人もいると思います。あくまでも病状を見て、産業医のご判断に従って、本人も納得の上で、プログラムの見直し(おそらくは後ろずれになることが多いと思いますが)もお願いします。

 

上記のように、長期間会社を休んでいた人は、独特の視点、独特の不安を抱えながら、復帰に取り組むことになります。

健常な状態の方とは少し違う視点で毎日過ごしていることを理解した上で、対応をしていただけると、結果的には戦力としての復帰も早くなると思います。

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