髭人爺(ひげじんじ)です。
今日は「部下を指導する時にはどう注意したらよいの?」という話です。
おととい、医療ヘリの「コードブルー」というドラマの再放送録画を見ていました。(ただひたすらガッキーの可愛さ見たさで録画していたわけです)
そこで先輩救命ドクターである新垣結衣さんが、後輩フェロー3名をどうやって指導するか悩む場面が何度か出てきます。医師である親から言われたから救命にきただけで、知識はあるが真剣に取り組んでいない男性フェロー、軽い感じでキャピキャピ(今どきこんな表現は使わないか)して少しも医師らしくない女性新人フェロー、患者思いだが、ただただ臆病で手が震える男性フェローというバラバラな個性をドラマ的に集めた場面が登場します。頭ごなしにガツンといえば、誰もがなにくそと立ち上がってくるような時代ではなくなり、上司側が気を遣って接しないと、簡単にやめてしまいそうな危うさがあり、まさしく今の時代を反映していると感じていました。
これは、医療現場だけではなく、一般の民間企業でも、今今の現実問題として起こっていることかと思います。
毎年厳しい就職活動を乗り越えて、たくさんの社会人の新人が、仕事の世界に入ってきますが、自分のイメージした仕事と違う職場に配属されたり、勤務地が遠い所への配属を告げられたら、とたんに、就職活動の苦労など忘れてしまったかのように、いとも簡単に離職してしまいます。もう聞き飽きた“ハラスメント”という表現が(きちんとした正しい理解もされず)イメージだけで独り歩きしてしまっている関係もあり、上司側が若い部下に対して【強い口調で指導できない】ような雰囲気が支配してしまっているようです。新人に辞められたくないマネージャーは、なぜか部下のご機嫌を取り、本人がやりたいテーマを担当させるのを優先して、実際は先輩社員が8割がたフォローし、何となく「自分がやった感」だけ味合わせるといった不思議な状況が、どの企業でも起こってきているようです。
そうなると当然ながら、新人は天狗状態になり、自分が何でも動かしているかのように思い込み、大きな挫折を経験することなく、数年過ごした後、「こんな単純な作業をやるために入社したんじゃない」という捨て台詞を残して、辞めてしまうということになるようです。
時代はすっかり変わり、随分と住みにくい世の中になってしまったようです。
筆者が新人の頃は、電話の呼び出し音を2回鳴らしてしまうと「遅い!」と怒られ(受話器で頭を小突かれ)、自分で立てた予定件数をやらずに途中で営業所に戻ると罵倒され「あともう10件回ってこい!」と怒鳴られ、きつい思いはもちろんしましたが、上司を恨んだり憎んだりしたことは一度もありませんでした。お客様にご報告を忘れてご迷惑をかけると、すぐに呼び出されて上司とお詫びに行くといった【社会人として当たり前の礼儀】を叩き込んでいただきました。
「愛のある指導」であることは、十分に感じており、何とか早く戦力になって所長に喜んでもらいたいと思ったものです。まさに「1人の社会人」としての姿勢を教えていただき、感謝の気持ちしかありません。今はそんな厳しく暖かい経験を新人時代にできるというのは少なくなってきているということなのでしょうか。
恐らくほとんど実務の「肝」の部分を経験してもないのに、転職を決めてしまった人は、行った先で【何でもできる優秀な人材】だという視線で見られ、やったこともない難しいテーマをアサインされると思いますが、あまりにも自分の実務の引き出しの少なさで壁にぶち当たり、「お前が自分でやれるといったんだろ!」と怒られることになってしまうでしょう。たった数年の実務経験では不足しているのが当たり前であり、転職して成功している人ばかりではないというのは事実で不幸な話です。最悪の場合、転職したその会社にもいられなくなってしまうかもしれませんし、その後も「負のサイクル」が回り、どこの会社に行っても中途半端になってしまう「転職ループ」に入ってしまう人もいると思います。転職するということは同期の仲間がいないということですから、誰にも苦しみを打ち明けられず、メンタル発症してしまったり、夢見て転職したのに、現実に愕然として自ら命を絶ってしまうという人も多いのです。
「新人時代の失敗経験がいかに大切な経験だったか」ということを、その時に知っても遅いわけです。すべてはこの「新人時代にどこまで真剣に育成できるか」が勝負なのだと筆者は思います。そのくらい新人を預かるマネージャーは腹を据えるべきです。
本当に部下思いのマネージャーほど、きちんと部下を叱るべき時は叱り、褒めるべき時は褒め、一緒になって考える時は膝を付け合わせて話をしているはずです。場合によっては「突き放す」ことの方が、部下の為になることも多いということを知っているからです。これが本当の《自立型人材の育成》だと思います。上司側の本気は必ず部下にも何らかの形で伝わるはずです。
部下を叱る時に「どう言ったらいいかわからない」というマネージャーは、【まだ部下への関心・理解・愛情が足りない】ということです。まずは、部下のことにきちんと関心を持ち、徹底的に好きになることです。自分の息子・娘だと考えて《躾》から担当するつもりで対応すべきです。そう考えても一番重要なタイミングは「新人社会人」として配属された際、初めて上司になる人の考え方が、その後の本人の成長、ひいては会社の成長につながることになるといっても過言ではないと思います。
またもう一つ認識しないといけないのは「自律型の新人育成が大事」=「新人にはやりたい業務をやりたいようにさせる」という考えは、非常にリスクがあるということです。知識も経験もない新人にやりたいようにさせるほど、会社としては余裕はないはずです。大きな仕事を担当させるとしても、必ずその管理責任は上司・先輩にあるということを忘れてはいけません。とはいっても口出しすぎると、新人側が嫌がってしまうという構図になります。昔であれば「つべこべ言わずに、まず言われたとおりにやれ!」という指導が多かったと思いますが、今の新人世代はやはり
「少子化で大事に(過保護に)育てられ、基本的にはいろんなことを準備してもらえると思っている人が多く、プライドだけは高いが、自分だけ目立つのは嫌で、仲間意識と言いながらもSNS等での緩い結びつきしかない。新規事業立ち上げのような恰好の良い仕事に就きたいし、自分のワークライフ(プライベイト)も充実させたいので、仕事は近くて楽で簡単に高い給料がもらえる会社が良い。海外には旅行ではいきたいが、別に海外で仕事をしたいということではない。国内でも転勤がなく、今までの友人関係で遊べる範囲内で過ごしたい。仕事に関しては(自分がきちんと理解できるまで)丁寧に説明してくれないと嫌。自分たちがうまくいかないのは教える側の問題」
という人たちの方が増えてきているのは間違いないです。20年30年前の世代のように「人とは違うことがしたい」「誰よりも出世したい」という考えを持っていると、変人扱いされてしまう時代です。
マネージャーとしては「その世代を否定するのではなく、この世代の特徴を理解しながらも最大限活用していきながら、企業の成長につなげていくしかない」と認識を新たにするしかありません。世代間のギャップという言葉では片付かない時代なのです。
そのような世代が増えてきていることを自覚することから、上司側は始めないといけませんが、「ご機嫌をとって」いても、会社の成長にはつながりませんので、何よりもその世代の心をつかむ努力を続けることが必要です。信頼関係が築けていないうちに、業務指示をしたってうまくいくわけがありません。彼ら彼女らは、きちんと理屈で説明を受けてから理解してからやっと前に進めるのです。これは変化にとんだ時代を生き抜いていく彼らなりの本能的な知恵だと思います。そこにプライドがあるのだということを配慮してあげられる人が、優れたマネージャーになっていくと思います。仲間で行動することや多くの情報を処理することに慣れているというプラスの面もあります。
時代が変わっても、唯一やり方が変わらないのは「ほめる時は人前で、指導する時(注意する時)は別の場所で」ということと、「手柄は部下に花を持たせ、失敗した時の責任は上司がとる」というのが鉄則です。
この辺りは昨今の、日大アメフト悪質タックル事件や、女子レスリング監督パワハラ事件等、ひいては国会での財務省文書ねつ造事件等での、責任者の対応が悪ければ、逆に大騒ぎに発展し、遺恨を残すことになるという事例でシミュレーション済ですね。
マネージャーの方は、今までよりももっと部下に関心をもって心をつかむことにパワーを使い、本人の意志で難しい課題にチャレンジしていくように育てることが重要と思います。