髭人爺(ひげじんじ)です。
今日は「メンタルの労災認定はどこまで増えるのか?」という話です。
先月テレビで「メンタル労災認定500名超」という話が出ていました。
20年近く前に企業内で新任管理職を対象に、メンタルヘルスケアの研修をさせていただいていた頃は、労災申請は400件くらいありましたが、労災認定までこぎつけるのは毎年100件~150件くらいだった気がします。長い期間、企業の長時間労働の実態は、納期必達のための徹夜等は当たり前の状況だったのが、〝過労死〟〝過労自殺〟ということが報道で取り上げられるようになり、企業側がやっと長時間労働への対策をうちはじめ、見た目(勤務管理データ上)の『時間外労働』はどんどん減っていきました。(実態は「中間管理職が作業を肩代わりする」「正社員の時間外労働を減らし、業務委託先に丸投げする」といったある意味《表面上の数字合わせ》が実施されていたわけです。サービス残業も問題になっていましたね)
政府も実態はある程度は把握していたはずですが、一旦は正社員雇用を中心に効果を測っていたようです。
ちょうど厚生労働省からも指針で「4つのケア」(詳細はリンクhttp://higejinji.net/mentaljijyo/mental4care/ )について指導が入り、労基署が立ち入り実態調査し始めたころで、企業側でも計画的に取り組むようになってきていました。今までのように紙面上(画面上)の勤務管理データを確認するだけでなく、建物への入館退館データとの付け合わせをして、アンマッチになっていたところを厳しく指摘され、その後何年も改善計画を出すことになった会社も多かったと思います。いずれにしても一時期は確かに報道も落ち着いていたと思います。
ただここ数年で、また〝過労自殺〟がクロウズアップされるようになっています。以前にも過労自殺で訴訟で負けて大きな損害金額を支払ったD社ではあろうことか、再度同じような事件が起きましたし、紅白で有名なN社も若い社員が自殺しました。ネットによる情報の広がりや、マスコミ報道では【ブラック企業】という名称が生まれ、企業内での実態を誰も確認できないまま、今や学生の就職活動の際の大きな関心事にもなっています。
企業間の新規開発競争は凄まじく、生身の人間が追いつけていません。<AI> がどこまで世界を変えていくのかも現実的な予想はできない状況であり、『将来<AI>に取って代わられる仕事は何か』という話がもっともらしく語られています。
こうなるとますます人間の進歩が、システムの進化に置いていかれてしまい、「ターミネーター」や「マトリクス」の世界に突入しそうです。当然ながら人間も「開発スピードに何とかついていける人」と「システムに使われる側の人」に分類されるでしょう。今は「システム化の過渡期」にすぎないのでは無いでしょうか?
実は個人的には、数十年後は「労災が起こるほど、人間が仕事をしていないのでは無いか?」ということまで想像しています。
IPS細胞等をベースに医療も進化するでしょうし、健康面については改善され寿命も延びるでしょう。ウェラブルな衣服も登場し〝過労〟になる前にチェック機能が働くことで〝過労死〟は少なくなるかもしれません。一方心の方はそんなに進化できないでしょうから、生身の人間が仕事をしているうちは、社会や仕事とのアンマッチで【メンタル発症】の人は増え、〝(過労かどうかはわからないが)仕事についていけなくて自殺する人〟は減らないような気がしてなりません。何とか今の時代のうちは、政府・会社の方針、上司の業務配分等による配慮で、身近に起こる自殺だけは防いで欲しいと思います。
部下側から「仕事を減らして欲しい」というのは、非常に難しいことだと思います。部下の負荷を減らすことができるのは、上司が仕事のプライオリティをつけて、無駄な仕事を中止するか後回しにするように指示するしかありません。
管理職の方は、まずはすぐにでも自分の部下の状況を一人一人確認していただくことをお願いしたいです。