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イネイブラー(病気が進行するのを助長してしまう人)になっていないか?

髭人爺(ひげじんじ)です。

今日は「あなたは知らず知らずのうちにイネイブラーになっていないか?」という話です。

イネイブラーとは何ぞや?と思う方もいらっしゃると思いますが、筆者自身も、ついこの間あるテキスト本を見ていて、正直初めて知りました。

【Enabler:病気が進行するのを助長してしまう人】というように定義づけられているようです。これは特にメンタルヘルスケアの対応で、上司や先輩、同僚たちが(無意識のうちに)やってしまいがちなことらしく、注意が必要と書かれています。

もしかしたら皆さん自身もしくは皆さんの周りにも同様のケースがあるのではないでしょうか?

上司が部下のことを思って、良かれと思ってした行動、話した言動が、部下自身の病状を逆に悪くしてしまうというケース、あるいは家族が何かで失敗して落ち込んだりしているのをみて、良かれと思って対応したことが、実際には余計に本人を傷づけてしまったり、本来の問題を見えにくくしてしまうといったケースです

 

具体的に、仕事上でよくありがちな例を挙げてみます。

失敗ばかり繰り返して落ち込んでいる部下が、連絡なしに遅刻したり、無断で欠勤して翌日に言い訳しているのを「自分もそんな時期があったなあ」と大目に見て、勤務管理表に「遅刻」とつけなかったり、気遣いとして「有給休暇」として処理する。 

元気がなさそうな部下を元気づけるために(本人が遠慮しているにもかかわらず)無理矢理のみに連れて行ったり、カラオケで発散させようとして、無理にマイクを握らせ歌わせたりする。

明らかにキャパオーバーになっている部下が「大丈夫です。やれます。」と言ったことを、そのまま真に受けて納期までまかせっきりにする。

といったようなことです。元々は本人の成長を望んでのことだろうと思いますし、場合によっては幸運にも、本人が奮起して、一皮むけるきっかけになることもあるかもしれません。

しかし、

上記➀のケースでは、就業規則違反としてきちんと指導すべきであり、実際のメンタル記録としても、後になって勤務記録そのものが問題になる可能性もあります。

上記②のケースは、メンタルヘルスケアという観点ではアルコールの摂取は病状を悪化させる原因になる可能性もありますし、本人は本音では嫌がっているかもしれません『上司本人がストレッサーである』という可能性もあるわけです。メンタルヘルスケアについての正しい知識と対応が必要と思います。

上記③のようなケースでも、本人としては実は上司に心配をかけまいと必死で笑顔を作っているだけかもしれませんし、逆に弱音を吐いたら評価が下がると思い込んでしまっているような「ギリギリのメンタル状況」である可能性も、決して「0」とは言えません。

上記➀~③のようなケースでは、あくまでも『正しい処理をした上で、きちんと関心をもって様子を見守る』という姿勢が前提であるべきと思います。

上記➀では「無断欠勤」という段階で、きちんと面談なりを実施し、状況によっては産業保健スタッフにつなげるという対応が必要だったでしょうし、上記②はそもそも「飲んだり、歌を歌ったりすれば、みんな誰でもストレス発散になる」と思っている時点で問題と思います。上記③は難しいパターンですが、仕事の量・質に関して配慮できるのは上司しかいませんので、慎重に進捗を確認しておくべきですし、むしろ「今日はここまでやったら帰る」ということを明確にしておくべきですね。

「イネイブラー側は、自分の行為の悪影響に気づいておらず、全く悪気がない」というところが一番大きい問題と思います。

良かれと思って本人をかばったり、素人判断で大丈夫と元気づけたり、遅刻や無断欠勤を(大目?に見て)正しく指導・記録しなかったりすることで、実際は病気の症状が出ているのに気づかず、悪化させてしまうということが実際にあるということです。

特に、アルコール依存症等でよくあるケースで、禁酒をしている人に対して、上記②のケースのように無理に飲みに誘ったり、どうしても参加せざるを得ない歓送迎会のような席で、ソフトドリンクで我慢している対象者に対して、「1杯だけなら大丈夫だろ」と飲ませようとしたりということが問題行為になります。最近もテレビをにぎわしているアルコール依存症や、薬物依存症については、一度“タガ”が外れてしまうと、周りの誰も「本人を止められない」状況になると言います。恐ろしいことです。そのきっかけを作ってしまうのがイネイブラーなのかもしれません。

 

「イネイブラー」というのは、仕事上だけでなく、家庭内でもありうることだと思います。

過保護な親が、子供を溺愛するあまり、自宅で家庭内暴力が起こっても『事件にならないのが本人のため』と信じ込み、本人が傷づくのを恐れて、何もなかったかのように我慢して隠すというケースや、部屋に閉じこもっている対象者本人に過剰に気を遣うあまり「閉じこもりやすいように」必要なものや食事を運び続ける等のケースです。完全に【引き籠ることを助長してしまう】ことになりかねません。もちろんそのような状態では、病状の悪化は避けられないと思います。

一見、本人に対して寛大な心や愛情を見せているようで、実際には「心の病気を進行させてしまう」ことになります。これがまさに【イネイブラー】そのものであると思います。解決方法は、親も誠心誠意、身体を張って、子供と真正面から向き合い、本当の家族として、本音をぶつけ合って、解決していくしかないと思います。自分自身が【イネイブラー】になってしまわないように、日々気をつけたいものです。

 

 

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