最近「パニック障害」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。なんの前触れもなく不意に心臓がどきどきしたり、息が詰まりそうになって胸が痛くなったり、苦しくて救急病院に行っても“特に異常なし”と診断されてしまうことの多い病気です。脳梗塞や心臓発作の症状とも似ている部分があるので、慌てて救急病院で検査される方も多いですが、実際には命に別条がないことがほとんどとのことです。
ただ、原因がわからないことでますます不安になってしまい「また同じことが起きるのではないか」と緊張しながら毎日を送っている人が増えているようです。(筆者自身もこの病気と未だに戦っています。)発作は10分以内にピークに達しますが、パニック障害のほとんどは数分から数十分程度で自然におさまります。「パニック障害」が発症する原因はまだまだ解明され切ったわけではないですが、最低限の知識を持つことで余計な不安に襲われることなく、治療に専念できる部分がありますので簡単に概要を記載します。
1)パニック障害 自己診断チェック(4項目以上の項目が突然現れるという該当者は精神科の受診を勧められています)
①心臓がどきどきする。脈が急に速くなる。
②冷や汗をかく
③手足や体が震える
④口が急に乾く
⑤鼻が急に詰まる。
⑥息が時々切れる。息苦しい。息が荒くなる。
⑦息ができない。
⑧胸(心臓)が痛い。胸が締め付けられた感じがする。
⑨吐き気がする。お腹が不快になる。
⑩前触れもなく急に排便・排尿がしたくなる。
⑪頭がフラフラして失神しそうになる。
⑫気がおかしくなるのではないかと感じる。自分でコントロールできない。
⑬自分が自分でない感じになる。
⑭今すぐに死んでしまうのではないかと思ってしまう。
⑮身体全体が急に熱くなる。もしくは急に冷たくなる。寒気がする。
⑯手足がしびれる。身体がしびれる。
⑰腰が抜けてしまう。下半身に力が入らなくなる。突然肩が凝る。
2)パニック症状のきっかけ
パニック症状は「脳内の警告システムが誤って作動する」ことが原因といわれています。脳が五感の刺激から身体に命令を発しているわけですが、何らかの原因で自律神経から間違った信号が出ると、周りは危険でないにもかかわらず「警告システム」が作動してしまい、自律神経系の中枢を刺激して動悸や目眩等の間違った発作を起こしてしまうというものです。それが神経細胞(ニューロン)を伝わる際にも、神経伝達物質であるノルアドレナリン等が不均衡になってしまい、脳と身体の各組織との間での情報のやり取りを阻害してしまうというところまでは研究が進んでいます。したがってMRIやCT等で脳の器質そのものの検査をしても「異常なし」となってしまうわけです。誤作動が起きる原因までは明確には解明されていないようですが、ストレス状態が高い時や誘発物質(ニコチン・カフェイン・アルコール等)がある時には注意が必要といわれています。
3)パニック障害の経過
一度パニック症状を起こして「パニック障害」を発症すると、多くの場合はほぼ決まったコース(①⇒⑥)を通ることが明らかになっています。そういう意味でも大変厄介な病気です。なるべく早いうちに専門医にかかるべきというのはまさに下記のような経過をたどらないように、もしくは症状が軽く済むようにということです。
①不意のパニック発作が起こる。(場所・状況を選ばず)
②パニック症状が頻発する。(「パニック症状は繰り返す」 特定状況に身を置くと発作が起きやすくなる)
③予期不安を持つようになる。(「また発作が起こるのではないか」と不安になる)
④回避行動をとるようになる。(同じ場所、同じシチュエーションを避ける)
⑤“広場恐怖”を持つようになる。(不安対象が広がる。人前での発作を避ける行動をとる)
⑥ウツ病を併発する。(パニック障害の人の生涯を通してみると60%が発症)
4)「広場恐怖」の場所・状況(なごやメンタルクリニック調べ:©パニック障害実例集 監修:貝谷久宣氏)
1位 飛行機
2位 船
3位 高速道路を走る
4位 新幹線
5位 渋滞に巻き込まれる
6位 窓のない部屋
7位 特急電車(途中で止まらない)
8位 高所
9位 行列に並ぶ
10位 歯医者
いずれも自分では動けないとか、すぐには逃げられないといった状況であることがわかります。たとえば理髪店のイスや満員のエレベーターも多数上がっているみたいです。(ちなみに筆者は1位、4位、6位、7位、8位、10位がNGです)